【ドラテク紹介】ハミルトンがF1ハンガリーGPで見せた”変わった”ドライビングテクニック

みなさんこんにちは!レーシングドライバー菊池宥孝です。
先日開催された、F1ハンガリーGPはご覧になりましたか?フェルスタッペン惜しかったですね。
僕は最近、DAZNというネット番組でF1を見ています。DAZNの「F1 ZONE」という放送では【オンボード、TV中継、セクタータイム、各車のコース上でのポジション】が1画面で観れるので非常に勉強になり、レースでは、「どんな時に、どんな操作を、何のために」やっているのか、色々と想像を描き立たせてくれます。
そのF1 ZONEで、ハンガリーGPの予選を見た僕は、「ある事」に気が付きました。
予選Q3でハミルトンのオンボードが終始流れていたのですが、彼のペダルワークが周りとは大きく違っていました。もちろんチームメイトのボッタスとも違っていたのです。
しかも、「ある条件下」のコーナーのみ、そのテクニックを使っていたので、狙って使っていたのだろうと推測されます。
今回は、ルイス・ハミルトンがF1ハンガリーGPで使った、ちょっと変わったドライビングテクニックについて解説していきます。
ハミルトンが使ったテクニック
結論から入りますが、ハミルトンが予選ラップで使ったテクニックは、アクセルとブレーキの両踏みです。
両踏みは、現代F1ではマシンへのダメージが大きい事から避ける傾向にありました。
実際に、数年前のF1でピットから無線で、「アクセルとブレーキを同時に踏んでいる。すぐにやめてくれ。」と指示が飛んでいます。
この時はレース中の無線だったので、より一層マシンへのダメージを心配したのでしょう。
今回は、
- 予選であること
- 信頼性の高いメルセデスのマシンという事
もあり、ハミルトンは持てるだけのテクニックを存分に発揮して予選に臨んでいたと考えられます。
両踏みを使っていたコーナーは、後半セクションに多くある、大きな減速を必要としない中速コーナーです。F1のブレーキ踏力は、ONかOFFかしか表示されない仕組みになっていますが、アクセル開度は細かく表示されます。
それによると、ブレーキを踏んでいる際にアクセルを半分程踏んでいることが分かります。
これ程アクセルを開けながらブレーキングするのは、現代のF1では滅多に見られないことです。僕は予選を見ていて、「おいおいマジか(笑)」と言ってしまいました。
ハミルトンが使った両踏みを解説
アクセルとブレーキの両踏みには、ブレーキング時のマシンの荷重移動を抑える効果があります。
一般道でも体感出来ますが、右左折の際にブレーキで減速しながら少しアクセルを踏んで曲がると、フロントサスペンションの沈み込む動きが少なくなります。
また、エンジン回転数も少しだけ高く保つことが出来るため、滑らかな立ち上がりをすることが出来ます。
上記の図は、今回のハミルトンが使った両踏みのペダルワークを僕なりに推測したものです。
アクセルワークは繊細に表示されますが、ブレーキ踏力はONかOFFだけなので、ブレーキ踏力に関しては一般的な、「初期踏力強めからの、徐々にリリース」だったと仮定します。
今回のハミルトンの狙いを推測すると、大きな減速を必要としないコーナーで両踏みしていたので、リアのグリップを得るため、またはマシンの最適なダウンフォースを得るために、リア荷重をキープしたかったのだろうと考えられます。
ポイントは、このアクセルワークです。両踏みを滅多に使わないF1で、これだけの量のアクセル開度があるということで、相当なリア荷重を求めていたのだろうと考えられます。
開催されたサーキットも、低中速コーナーが多いのが特徴で、マシンをかなりオーバーステアな方向性に持って行っていたために、中速コーナーでリア荷重が必要だったのではないかと思われます。そこで、両踏みを使ってリア荷重を残していたと僕は考えました。
両踏みのデメリット
最初に少し触れましたが、両踏みをすることによって、マシンにダメージを与えることになります。
最も大きなものは、ブレーキにかかる負荷です。当たり前ですね、アクセルを開けながらブレーキングするのですから当然負荷が増します。1000馬力を超えるF1なら、とんでもない負荷がかかることでしょう。
さらに、タイヤに対する入力も上がるので、タイヤへの攻撃性も高まります。
どんな場面で使うのか?
ここまでの話を整理すると、両踏みの効果は、
- フロントへの荷重移動を抑える(リア荷重を残す)
- エンジン回転数を高く保てる
ことです。
反対に両踏みのデメリットは、
- ブレーキに負荷がかかる
- タイヤへの攻撃性が高まる
ことです。
今回は予選という事もあり、ブレーキの負荷やタイヤへの攻撃性については、ほとんど気にする必要はありませんでした。
ハンガリーGPのハミルトンは、中速コーナーへの進入でアクセル開度40%程でした。2019年のメルセデスのマシンは、コーナリングマシンに作られているうえに、コース形状的にもオーバーステアな方向性に持っていっていた可能性が高いため、
- 曲がりすぎる車の特性を抑えるため
- 最適なダウンフォースを得るため
にハミルトンは両踏みを使っていたのだと考えられます。
入門レースでも使えるのか?

カートや四輪でも両踏みは使えるのか?
こうなると自分でも試してみたくなりますよね。
今回はF1で使われたハミルトンのテクニックを紹介しましたが、このテクニックは入門レースでも使えます。
しかし僕の場合は、今回紹介したものとは別の理由でカートとフォーミュラカーで両踏みを使っています。
ここからは、キクブログnextの方で紹介していきますね。キクブログnextの目次を紹介します。
冒頭の無料枠では、雨の両踏みについて動画解説を公開しているのでよかったら見てみてください。最後は実践例として、僕のデータロガーも見せます。
目次紹介
- 4種類のレーシングカートでの実践例
- 3種類のフォーミュラカーでの実践例
- 【応用編】菊池のデータロガー見せます
◆続きはこちら→ミスまで帳消しにする!? 8種類の両踏みをマスターせよ ※5897字
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