【2019開幕戦!】F1オーストラリアグランプリの見どころ

みなさんこんにちは。レーシングドライバー菊池宥孝です。
いよいよ3月17日に2019シーズンのF1世界選手権が始まります。長いオフシーズンを経て、「観るモチベーション」も高まってきているのではないでしょうか?
プレシーズンテストでは終始好調だったフェラーリや、名門復活の予感を感じさせるマクラーレン、さらには2年目のタッグとなるトロロッソ・ホンダも調子が良さそうでしたね。昨年から空力のレギュレーションが大きく変わり、大きくマシン構造を変えたチーム、昨年とあまり変わらない構造のチームに分かれました。好調だったフェラーリやトロロッソは、昨年と大きく変わらないマシン構造が良い方向に進んでいるようでしたね。
今回はF1プレシーズンテストの結果と昨年のF1グランプリ開幕戦の情報をもとに、F1オーストラリアGP2019の見どころと勝負のポイントになるであろう部分を、現役レーシングドライバーならではの視点で予想していきたいと思います。
また、僕自身がPS4のF12018というゲームで実際に走行してみて、個人的な結論を導き出します(笑)※走りたいだけです。
目次
オーストラリアグランプリのコース特徴
世界一住みやすい街に選ばれるオーストラリアのメルボルンで開催されるF1オーストラリアGPは今年で22回目、通算24回目になる伝統あるグランプリです。
コース名は「アルバートパークサーキット」と呼ばれています。ここは、公道を使ったサーキットで、
- 落ち葉などによって路面が汚い
- バンピー
- 狭い
- ターンアングルが小さいコーナーが中心
- ストップ&ゴー
ということが特徴です。さらに、夕方に開催されるため日影になる部分が多く、前半セクションはブレーキングポイントが分かりにくくなります。
また、ここ数年のF1マシンはダウンフォースの増加によって全開で行けるコーナーが増え、ストップ&ゴーのレイアウトながら、ブレーキに厳しいサーキットでは無くなりつつあります。
F1 2018で走ってみた

F12018
せっかくなので、F1 2018で走ってみました。
今回は、30分走り込んで感じたことやコース攻略のポイントを解説します。
F1 2018走行動画
菊池の感想

イン側の縁石が高い箇所が多い
まず最初の印象は、「縁石使いずらい(笑)」でした。5速以上のコーナーでアクセル全開のまま縁石をかすめるだけでスピンしてしまうほど、縁石が高く作られている箇所が多いです。ダウンフォースが車の挙動に直結するF1では、縁石に乗った際に空気の流れが乱れてバランスを崩しやすくなります。
また、1.2コーナー、6.7コーナー、9.10コーナーは、右回りの中速コーナーの後にアクセル全開で曲がる左曲がりの高速コーナーのため、いかに早くからアクセルを開けてトラクションを失わずに走ることが出来るのかがポイントになるでしょう。

オーストラリアGPコース図(F12018より引用)
また、セクター3の後半部分はアンダーステアが出やすく、車を曲げる技術と上手いセットアップが必要になるのではないかと考えました。
セッティングはデフォルトセッティングとダウンフォースを増やしたセッティングを試しましたが、タイムにはあまり大きな影響は出ませんでした。ストップ&ゴーのレイアウトであるため、ダウンフォースを増やすとストレートスピードがかなり犠牲になります。バンピーな路面であることも考慮すると、メカニカルグリップが高い車ほど有利になると思いました。
エンジンは速い方が有利なのは分かりきっていますが、3速の低回転を使うコーナーもあるため、トルクがあって繊細なアクセルワークが出来るドライバビリティの良いエンジンが良さそうです。
プレシーズンテストの情報
最終日タイム結果
順位 | ドライバー | チーム | タイム | タイヤ | 周回数 |
1 | S・ベッテル | Ferrari | 1:16.221 | C5 | 110 |
2 | L・ハミルトン | Mercedes | 1:16.224 | C5 | 61 |
3 | V・ボッタス | Mercedes | 1:16.561 | C5 | 71 |
4 | N・ヒュルケンベルグ | Renault | 1:16.843 | C5 | 51 |
5 | D・クビアト | Toro Rosso Honda | 1:16.898 | C5 | 131 |
6 | C・サインツJr. | McLaren | 1:16.913 | C5 | 134 |
7 | R・グロージャン | Haas | 1:17.076 | C5 | 73 |
8 | D・リカルド | Renault | 1:17.114 | C5 | 52 |
9 | K・ライコネン | Alfa Romeo | 1:17.239 | C5 | 132 |
10 | K・マグヌッセン | Haas | 1:17.565 | C5 | 94 |
11 | M・フェルスタッペン | Red Bull Honda | 1:17.709 | C3 | 29 |
12 | S・ペレス | Racing Point | 1:17.791 | C5 | 104 |
13 | R・クビサ | Williams | 1:18.993 | C5 | 90 |
マシントラブルで走行を中止したレッドブルのマックス・フェルスタッペンは硬めのタイヤであるC3タイヤでタイムを計測しました。
それ以外のチームは、最も柔らかいC5タイヤで1発のタイムを出しに行きました。
上位チームの情報
メルセデス
王者メルセデスは今年も安定したプレシーズンテストを過ごしました。チーム別周回数では11902周を走りきり堂々の首位。目立ったトラブルもなく、多くの走行データを持ち帰ることに成功しています。
個人的にはプレシーズンテストで多くの周回数を稼いだチームが開幕戦までにマシンのアップデートに成功する可能性が高いと考えているので有力な優勝候補と見て良いでしょう。
フェラーリ
プレシーズンテストで終始好調を維持していたフェラーリですが、僕が驚いたのは1発のタイムではなく、C3タイヤで出したタイムです。C5タイヤでアタックした後に、C3タイヤに履き替えて1:16.720秒のラップタイムを刻みました。単純計算で、C3タイヤからC5タイヤに履き替えた時のタイム差が約1.2秒のため、1:15.500秒付近のタイムを出せるポテンシャルを秘めていると思われます。
レギュレーション変更で消えると思われた、フロントウイングの「アウトウォッシュ効果」を失わずにセットアップ出来たことが、好調の最大の要因であるとも言われています。
アウトウォッシュ効果についてはオートスポーツさんの記事で詳しく解説してあります。
また、新加入のシャルル・ルクレールも2019年型マシンSF90に素早く合わせ込み、日にちが違うものの、トップタイムのセバスチャン・ベッテルの0.010秒落ちの好タイムを出しています。
一方で不安要素がある可能性も指摘されています。実は7日目に冷却系のトラブルを抱え、多くの走行が出来ませんでした。チーム代表も「信頼性を高めていきたいので、満足できない。まだ最強にはなれていない。」という趣旨の発言をしています。冷却系が弱点だとするならば、レースで前にマシンがいるとペースを上げられない可能性が高まり、レース終盤の周回遅れを処理する際にオーバーヒートを起こしてしまう可能性も考えられます。
レッドブル・ホンダ
2回目のプレシーズンテスト初日まではレッドブル・ホンダは良い流れでテストを進められていました。しかし、2日目~4日目までトラブルや大クラッシュによって走行時間を大幅になくします。
プレシーズンテストでは、いかに多くの周回数を稼いで有意義なデータを使って開幕戦までに車を仕上げられるかが最も大事なことなので、データ不足のレッドブル・ホンダは開幕戦は厳しいのではないかと予想されます。
開幕戦順位予想
予選トップ10の予想
順位 | ドライバー | チーム | 予想タイム |
1 | S・ベッテル | Ferrari | 1:20.000 |
2 | C・ルクレール | Ferrari | 1:20.050 |
3 | L・ハミルトン | Mercedes | 1:20.080 |
4 | V・ボッタス | Mercedes | 1:20.200 |
5 | N・ヒュルケンベルグ | Renault | 1:20.750 |
6 | M・フェルスタッペン | Red Bull Honda | 1:20.800 |
7 | K・ライコネン | Alfa Romeo | 1:20.850 |
8 | D・リカルド | Renault | 1:20.900 |
9 | K・マグヌッセン | Haas | 1:21.000 |
10 | C・サインツJr. | McLaren | 1:21.150 |
ほぼプレシーズンテストでの仕上がり通りの予選結果になると思われます。昨年のようにハミルトンがパーティーモードのようなスーパーラップを魅せてくれそうですが、フェラーリの速さには敵わないでしょう。
手堅く開発を続けるルノーが5位に来て、経験が必要になりそうなコースレイアウトのため、ライコネンがポテンシャル以上の速さを示してくれそうです。
決勝トップ10予想
順位 | ドライバー | チーム |
1 | L・ハミルトン | Mercedes |
2 | S・ベッテル | Ferrari |
3 | C・ルクレール | Ferrari |
4 | V・ボッタス | Mercedes |
5 | D・リカルド | Renault |
6 | M・フェルスタッペン | Red Bull Honda |
7 | C・サインツJr. | McLaren |
8 | K・マグヌッセン | Haas |
9 | P・ガスリー | Red Bull Honda |
10 | S・ペレス | Racing Point |
レースの予想は難しいですね(笑)
プレシーズンテストのようにトラブルフリーで走りきれそうなメルセデスが優勝すると予想します。他は、個人的にレースに強そうなドライバーを挙げてみました。
ズバリ!2019年チャンピオンは?
「チャンピオンはルクレール!!」と言いたいところですが、ナンバー2扱いをほぼ確定されてしまったため、相当予選で良いところを見せない限り難しいでしょう。個人的には昨年のリアを流し気味に車を動かす走りのシケインを見て、「これは凄い」と思ったので期待してしまいます。ナンバー2扱いされなければ、チャンピオンを獲れる可能性は十分にあるでしょう。
本命はやはりルイス・ハミルトン(メルセデス)です。今年のフェラーリはかなり速そうですが、かなり攻めた作りのためマシントラブルによるリタイアも多くなりそうな気がします。メルセデス最大の強みは「2位でも構わない。チャンピオンシップは長いのだから。」というチーム方針です。昨年は予選でフェラーリに負けることが多かった時も常にこの考えを忠実に守り、手堅くポイントを獲得したことがチャンピオン獲得に大きく働きました。さらに、開発スピードも正確で速いのも強みです。プレシーズンテスト1回目での遅れを2回目では取り戻してきたので、優秀な開発チームであるのが良く分かります。
フェラーリがタイトルを取るためには、「いかに取りこぼしをなくせるか」が大きなポイントになると思われます。現時点で速さは一番持っているチームに見えるため、リタイアしないようにこれから信頼性を高めていければタイトル獲得の可能性は高まるでしょう。
日本人として、レッドブル・ホンダの躍進にも期待したいところです。しかし、プレシーズンテストでの出遅れは大きなロスであるため、タイトル獲得は難しいと思います。シーズン5勝が目標になりそうです。
2019年F1世界選手権は、いよいよ3月17日に開幕します!楽しみですね!
実は僕も3月17日に鈴鹿サーキットでスーパーFJのレースに出場します!こちらの応援もよろしくお願いします!!
おまけ
F12018でレインコンディションも走ってみました!
このサイトの運営者である、レーシングドライバー菊池宥孝は2021年もFIA-F4選手権の参戦に向けて準備を進めております。しかし予算面で諸事情があり、2021年シーズンは何も決まっておりません。
現在、FIA-F4の参戦と優勝を目指して準備をしている段階です。
よろしければ【2021年度のレース参戦企画書】をご覧いただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。