【中古のレーシングカートの選び方】必ず知っておきたい事まとめ

みなさんこんにちは!レーシングドライバー菊池宥孝です。
僕は2017年までレーシングカートで全日本カート選手権などに出場していました。2019年現在はフォーミュラカーシリーズ、スーパーFJにステップアップして、鈴鹿サーキットや岡山国際サーキットのレースに出場しています。
今回の記事は、これからレーシングカートを始めようと思っている方、新車は高くて手が出ないから中古で乗り換えを考えている方など、初心者向けのレーシングカート選びのお手伝いが出来たら嬉しいと思って書きました。
上級者向けの記事はこちらです→https://racing-hirokikuchi.com/racingkart-selection-2/
まず、「安いものには裏がある」というように激安のレーシングカートを購入しても、遅いうえにすぐに壊れる、レギュレーションに適合出来ずレースに出られないといった事が起きます。
そういった失敗をしないようここでは、「安く」「安全に楽しめる」レーシングカートの選び方を、自分のレース経験をもとに注意点をお伝えしたいと思っております。
僕の経験から言うと、「安く」「安全に楽しめる」レーシングカートを購入出来る価格は、最低でも25万円から。そんな風に考えています。
今、どんなレーシングカートを購入すれば良いのか悩んでいる方は、こちらのリンクからお気軽にご相談ください。
ときどき、レーシングカートコースでお会いする初心者の方に「最初は腕を磨きたいから、中古などの出来るだけ安いもので練習したい」という方がいらっしゃいます。
お金がかかる競技ですので「少しでも安く乗りたい」という気持ちはあると思います。
僕自身レースを始める時、少しでも安く始めようと考えていたので、その気持ちは痛いほどよーく分かります。
しかし、ある一線を超えた安さや年式のカートは、危険でトラブルの多い粗悪なカートなりかねません。
今回は、僕の考えるレーシングカートの賢い選び方について解説します。
目次
格安の中古レーシングカートに手を出してはいけない理由
フレームが曲がっている
僕の経験上、15万円以下のレーシングカートはフレームが曲がっています。
素人目には、曲がっているように見えないフレームでも前後左右で3ミリでも曲がっていれば、
- 真っ直ぐ走らない。
- 少ししかブレーキを踏んでいないのにタイヤがロックしてスピンしそうになる。
- 右コーナーはオーバーステア、左コーナーはアンダーステア。
などといった、身の危険を感じながら集中出来ない状態で走行する事になります。
初心者のあなたが、ブレーキング中に予測できない位置でタイヤがロックしてカートがスピンモードに入ったら、それを立て直せますか?
「シミュレーターで練習してきたからそれくらい大丈夫だ!」という方。実車は全く違います。実車での経験をもとにシミュレーターで練習するのが正しい使い方です。
初めてのスピンはよっぽど運が良くない限り立て直せません。
そのままクラッシュします。
せっかくのMYカートもぐちゃぐちゃになり、予測できない挙動におびえながら走っても上達しません。
マシンの限界を学ぶために、良い状態で練習しましょう。
フレーム修正してある車体も買ってはいけない

こちらがフレーム修正機です
フレーム修正をしているレーシングカートは“即”候補から除外しましょう。
僕自身痛い目を見てきたので断言できます。
詳しい情報はこちらの記事にまとめています。→中古のレーシングカートはフレーム修正をしていても本当に大丈夫か?
エンジン付きのレーシングカートを購入する危険性
時々見かける、中古のエンジンとセットで売ってあるカート。
「エンジン付きなのですぐに走れます!」なんて謳い文句見かけませんでしょうか?
レース経験者ならお分かりかと思いますが、同じ種類のエンジンにも個体差があります。その中で速いエンジンは高く売れます。また、そういったエンジンはメンテナンスもしっかりされているので、壊れにくいです。
そのため、エンジン付きで売ってあるカートのエンジンはメンテナンスも、ろくにされていない、いつ焼き付いてもおかしくないエンジンが付いています。
3年程前、僕が練習をしていた時の事です。
よく一緒に練習していた方が、エンジンが焼き付き90キロ超のスピードが出るストレートでスピン。
そのまま、タイヤがロックしてコース脇のクラッシュパッドに突っ込んでフレームも廃車になりました。
奇跡的に、むち打ちと脇腹の打撲で済みましたが、フレームは反り返ってしまい、修正すらできない状態になってしまいました。
後で話を聞いてみたところ、某オークションアプリで購入してきた安物のエンジンで走っていたようです。練習用に購入したみたいですが、レースでも使うカートで走っていたのでレースに出られなくなってしまい、酷く落ち込んでいました。
その後、その方にはお会いしていないので辞めてしまったのだと思います。どこかで続けていてくれれば嬉しいのですが…
僕は、せっかく購入したカートなのに、こんな形でカートを辞めて欲しくないと考えています。
カートは安全で楽しい乗り物です。
ブレーキトラブルに注意しよう
安く購入したカートのフレーム側のパーツのメンテナンスにも注意が必要です。
僕が昨年全日本選手権に出場した際のメカニックの方は現役時代、中古で安く購入したカートで走行中、ブレーキが抜けてしまいフルブレーキが必要な低速コーナーを、80キロのスピードで正面から突っ込みました。
不幸なことに突っ込んだ先にはクラッシュパッドが無く、当時は木が立っていました。
彼はあまりの痛みに意識を失い、痙攣を起こし、そのまま病院に運ばれたらしいです。診断の結果、右足を骨折してしまい長期間カートに乗れなくなってしまいました。
このような危険な粗悪車が数多く出回っているレーシングカートですが、しっかりとメンテナンスすれば、安全で楽しい乗り物です。
みなさんは、売り物にならないモノを少しでもお金に変えようとする悪徳商法まがいの販売者に騙されないように注意してください。
年式の古い中古レーシングカートはやめるべし

遅いうえ、故障のリスクが高いです
普通の車と同じようにレーシングカートも年式が新しいほど性能も良くなります。
各カートメーカーが毎年開発を繰り返しているので新しいカートには最新のノウハウが詰め込まれているのです。
そして、ブレーキなどの精密部品系のトラブルも少なくなります。
せっかく練習しに来ているのにトラブルで走れなかったら意味のない1日になってしまいますよね?
レーシングカートは普通の車と違って古い車体には全く価値はないので、多少初期投資が高くても「速くて壊れにくい」新しい年式のレーシングカートを選んだ方がコスパと速さの面で賢い選択です。
また、古いカートは現代のレギュレーションに適合していない場合が高いので、レースに出られない場合もあり、注意が必要です。
状態の悪いレーシングカートの見分け方
もし、購入しようか迷っているカートがあった場合、そのカートの状態を素人目にも確かめられる方法があります。
これは、実際に見に行かなければ確かめられない方法です。
- まずはエンジンを外して、タイヤが付いた状態でカートを地面に置きます。
- ハンドルを目一杯右に切り、右側のリアタイヤの浮き具合を測ります。
- 今度はハンドルを目一杯左に切り、左側のリアタイヤの浮き具合を測ります。
左右にハンドルを切った時、フレームが曲がっているカートは左右の浮き具合が全く違います。
この方法で3~4㎝違いが出るようでしたら、そのフレームはかなり曲がっていますので避けるべきでしょう。
しかし、この方法では分からない小さなフレームの曲がりもあります。
それは、実際に乗ってみないと分からないことなので、一度試乗してみると良いでしょう。
レーシングカートに試乗しよう
中古車であればショップによっては試乗させてくれる場合もあるので、お近くの販売店で聞いてみると良いと思います。
もし、中古車の試乗を断られたのであれば、それは「面倒くさい」か「隠したいことがある」場合です。
そういったところは信用できません。
もし、とりあえず試乗してみたいと思っていたらお気軽に相談して下さい。
走行経歴の分からないレーシングカートは避けよう
あなたは、ヤフオクやショップで状態の良さそうなものを見つけました。
「どこでどのように使われたか分からないけど、綺麗だから状態も良いに決まっている!買おう!」
ちょっと待った!!
いつ、どこで、どのように使われたのか分からないカートを買うのは博打と一緒です。
クラッシュしているかもしれないし、どんなメンテナンスがされているかも分からない。
最低限、使用されたレースが分かるものを購入しましょう。販売元から教えてもらえない場合、普通の車で考えれば事故隠しと同じくらい悪質だと考えても良いでしょう。
レース名を教えてもらったら、そのレースのリザルトを調べましょう。
もし、そのカートの名前が無かったら嘘を付いている悪質な販売者ということになります。それくらいやった方が確実です。
実際にレーシングカートを見て確かめる際の注意点
「販売元の言っている事が信用出来ない」と思った場合、大体の使用状態を確かめる方法があります。
それはフレームの裏側を見る事です。

使っていくうちにフレームの裏側は削れていく
上から見て綺麗なカートでも、下から覗き見ると汚い場合もあります。
汚れがついているまま売っている場合、販売元のメンテナンスのレベルの低さが垣間見えるので、避けるべきでしょう。
裏も綺麗だけど購入を避けたいカートもあります。
それは、「フレームの削れている面積が広い」「後ろの方まで削れている」場合です。
その場合は金属疲労でハリのなくなったカートの可能性が高いです。
僕の経験上、「実際に乗った時の膝下の部分」「シート周りの一部分」が削れているくらいであれば問題ないでしょう。この部分は頻繁に地面に擦る部分なので大丈夫です。
しかし、コースアウトをしたり、小石を拾ったりして、フレームが凹んでいる場合があります。
凹んでいたからと言って性能が落ちる事はありませんが、普段擦らない部分ですので、錆が発生する場合があります。錆が発生したフレームは次第に性能劣化を起こしていくので、錆を防ぐためのタッチペンをしてあるものが良いでしょう。
メンテナンスがしっかりされているか確認しよう
レーシングカートはメンテナンスが命です。
特にブレーキはこまめにメンテナンスする必要があります。命にかかわる部分ですので本当にデリケートな部品だという意識をもって手入れしてある人から買った方が良いです。
また、綺麗に掃除がされていなく、錆が出来ていたり、汚れがこびりついていたりするフレームもやめた方が良いです。
車体の掃除は、オーナーの気持ちの入り方がよく現れます。1日走行してヘトヘトになってから隅々まで綺麗に掃除するのは根気のいる作業です。
汚いレーシングカートは、走り終わってから、掃除するのが面倒くさくて適当に拭き取って、そのまま片付けるという光景がすぐに浮かびます。
そんなオーナーにメンテナンスされたレーシングカートは、いつトラブルが起きてもおかしくない危険な状態であることが多いです。
「納車までには、整備してお渡しします」と言っても、現状整備されていないのであれば、そのカートは各部品が痛んでいるトラブルの温床です。前オーナーがしっかりメンテナンスしてあるカートを選びましょう。
現状渡しほど危険なカートはありません。例えば、ブレーキオーバーホールなどの、メンテナンスをしてから納車してくれるところは親切ですね!
メンテナンスは命に関わる事ですので、そこにお金を掛けてくれる人から購入しましょう。
どこで購入できるの?
レーシングカートをネット上で探すと、「ヤフーオークション」「各レーシングカートショップ」「通販」など様々なところで売られています。
安心して購入できるのは、「現状販売をせず、整備内容が明記されている」販売元であれば大丈夫です。
ぜひ、この記事の情報を役立ててください。
まとめ
カートを購入するとき、安く買おうとするあまりに、初期投資を低く設定して実際に乗り始めてから、無駄な買い物をしたという方を多く見てきています。
みなさんにはこういった経験をして欲しくありません。
「安物買いの銭失い」がこれほどピッタリ似合うジャンルは珍しいですが、本当の事です。
- 新しい年式
- 値段だけで選ばない
- 良い状態のフレーム
- こまめなメンテナンスが行われていたか
- 納車前整備内容を確認する
- カートの状態をきちんと把握する。どのような使われ方をしていたのか、本当にレースに出ていたのか調べる。
これらのことを意識してレーシングカートを選ぶだけで、ハズレの車体を購入してしまう確率はグッと抑えられます。
今回の記事が、みなさんのレーシングカート選びに少しでもお役に立てれば嬉しく思います。
上級者向けのレーシングカートの選び方はこちらです→https://racing-hirokikuchi.com/racingkart-selection-2/
このサイトの運営者である、レーシングドライバー菊池宥孝は2021年もFIA-F4選手権の参戦に向けて準備を進めております。しかし予算面で諸事情があり、2021年シーズンは何も決まっておりません。
現在、FIA-F4の参戦と優勝を目指して準備をしている段階です。
よろしければ【2021年度のレース参戦企画書】をご覧いただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。