レーシングドライバーのトレーニング紹介

みなさんこんにちは。レーシングドライバー菊池宥孝です。
レーシングドライバーはレースを完璧に走るため、日々地道なトレーニングをしていることはご存知でしょうか?
サーキットを高速走行するレーシングカーを見て「うわっ!速いなあ…」と思う人は多いと思います。しかし、「あの車の中にいるレーシングドライバーの体力は持つのだろうか?」と考える人はほとんどいませんよね?
僕自身、「レースのためにジムに通っている」と言うと、「レーサーって筋トレする必要あるの?」と9割くらいの確率で聞かれます(笑)
レンタルカートなど、少しでもモータースポーツの経験がある方なら、見た目以上に体力が必要になるスポーツであると体感したはずです。
レーシングドライバーに必要な要素として、
- 体力
- 技術
- センサー
- 考える力
- 人間力
この5つはなくてはならない能力です。どれか一つでも欠けていると、プロとしてやっていけないでしょう。
そのため、毎日馬鹿みたいに筋トレだけをするドライバーや、車の勉強だけしかしないドライバーよりも、筋トレをしつつ勉強もトレーニングの一環としてバランス良く取り入れるドライバーの方がレーシングドライバーとして優秀な可能性が高いです。
毎年オフシーズンにF1ドライバーはスカッシュなどユニークなトレーニングを取り入れたりしていますが、あれは筋力以外にも鍛えなければいけない能力があるためなのです。
そこで今回は、レーシングドライバーのトレーニングについて解説していきます。
目次
シミュレータートレーニング

広く一般的になってきたシミュレーター
体力 | ★★ |
技術 | ★★★★★ |
センサー | ★★★★ |
考える力 | ★★★★★ |
人間力 | ★ |
まずは、シミュレータートレーニング。F1では昔から取り入れられてきたトレーニングですが、時代の進化と共にパソコンさえあれば実車に近い挙動(車の動き)が再現出来ることによって、最近のレース界では当たり前のトレーニング方法になりました。家庭用ゲーム機と違って、本物のレーシングカーを運転しているようなフィーリングを得られます。
特徴としては、限界域で走らせた場合のフィーリングが似ています。限界域に全く達していない場合や、限界域を簡単に超えてしまった場合などは、「あれ?」と思うような動きになってしまうこともありますが、車を曲げるきっかけや限界域付近(98%~102%)の動きは非常にリアリティのある挙動を示します。
シミュレーターのトレーニングとしての使い方
実際にシミュレーターをトレーニングとして使う場合、ただ乗っているだけでは意味がありません。頭を使わなければ成長は止まってしまいます。ここからは具体的な実例を紹介していきます。
セッティングを出していく
まず、基本的な車の動きを自分がサーキットで乗っている車に近づけます。まだ自分の車の動きが分からない方は、ここを飛ばして走りの追求に移りましょう。
自分が乗っている車の動きに近づけるためにはセッティングを出していく必要があります。そのとき、「どの部分をどのような方向に変えたらこんな動きになった」と理解しながら進めていきます。必ずしも実車で同じような変化をするとは限りませんが、動きを感じ取りながらセッティングしていきます。
「柔らかいスタビで車がロールするとこんな風に変わるのか」「リアのダンパーを硬くしたら、このコーナーは気持ち良く曲がるけど、あのコーナーではオーバーステアが出すぎているな」といった具合に、一つ一つ確かめながら地道に進めて行きます。この経験が実車でセッティングを出していく時にも役に立つことでしょう。
走りを追求する
いよいよ走りの追求です。
最初は一発のタイムを出せるように練習します。「どのような操作をしたら、車がどんな動きをしたのか?」「どうしたらタイムに繋がるのか?」感じて考えながら走りましょう。
シミュレーターなので、クラッシュしても高額な修復費用は掛かりません。
大げさに言うと100か0かくらいの気持ちで、たくさんスピンやクラッシュするまで思いっきり走り込みます。
ある程度一発のタイムが出せるようになってきたら次に、同じラップタイムで走り続ける練習です。
最低でもベストラップの0.2秒落ち以内には入るように。目を閉じても走れるくらいに集中力を切らすことなく走り続けます。この集中力の維持がシミュレータートレーニングで一番疲れるポイントです。
このトレーニングで安定したペースを意識して走った結果、ベストラップを更新出来ることも多いです。なので、安定して周回を重ねることと同時に、車の理想的な操作を試行錯誤しながら走らせることが重要になります。
レーシングカートトレーニング
体力 | ★★★★★ |
技術 | ★★★★ |
センサー | ★★★★★ |
考える力 | ★★★★★ |
人間力 | ★★ |
現役のF1ドライバーの多くがオフシーズンに取り入れているのがレーシングカートトレーニングです。
世界最高峰のKZクラスを見ているとF1よりも速く感じる時があります。そのため、体の反応速度を鍛えられ、オフシーズンにレース感覚を鈍らせたくないドライバーは積極的に取り組みます。ただ、F1ドライバーでなくてもレーシングカートは良いトレーニングになります。最高峰のKZクラスのマシンに乗らなくても良いです。
最高速度100キロほどのレーシングカートでも、速く走るために必要な技術や体力は共通している点が多くあります。車の向きをしっかり変えないと速い速度で曲がれませんし、コーナーに突っ込みすぎたり、立ち上がり重視すぎたりしても良いタイムは出せません。4輪レースと同じですね。
カートコースは1周50秒以内の短いコースばかりなので、多くの周回数を反復練習のようにトレーニング出来ます。また、地面やタイヤからのフィードバックをダイレクトに感じるため体のセンサーも磨くことが出来ます。
身体トレーニング
体力 | ★★★★★ |
技術 | ★ |
センサー | ★★★★ |
考える力 | ★★★★ |
人間力 | ★★★ |
※ここから先の内容は、2018年の少し古い内容です。2019年はさらに大きくトレーニング方法を変化させて成績も向上しました。
2019年のトレーニング方法はこちら→https://racing-hirokikuchi.com/racingdriver-training2019/
車を運転するレーシングドライバーですが、体力はライバルと差を付けるために非常に重要なトレーニング項目になります。よく、「体力さえ持てば大丈夫だから特に鍛えていない」と言っているドライバーがいますが、これは間違いです。
身体を鍛えると同時に車の動きを感じ取るセンサーに繋がる部位も鍛えられるので身体トレーニングは欠かせません。自分に合った鍛え方をトレーニングしながら見つけていくため、意外と考える力も大切になります。
また、ステップアップしていく過程でF3などのハードなカテゴリーに進んだ際、「ハンドルが切れない」「ブレーキが踏めない」「首が耐えられない」という状況になるドライバーは少なくなく、そんな状況になれば速く走れるわけがありません。筋力は短期間で鍛えられるものではないため、早くからトレーニングに取り組む必要があります。
筋力トレーニング
レーシングカーで、普通車のように操作出来るのはアクセルくらいです。
ブレーキ、クラッチペダル、ハンドルなどはかなり重く、繊細に操作するためにはパワーが必要になります。
頑張って力を込めなくても、楽に余裕を持って操作出来るようになれれば、車からの情報を的確に受け取って、より多くの性能を発揮させることに繋がります。
僕は、ペダル踏むための脚力、ハンドルやシフトチェンジの際に使う腕力や肩回りの筋肉を中心にトレーニングしています。
体幹トレーニング
体幹トレーニングは主に、コーナリング中に遠心力を感じる中でも正確に車を操作するために必要になります。専用のトレーニングメニューはもちろんの事、体の軸がぶれないように意識してトレーニングするだけでも効果があります。
具体的には、腹筋周りの体幹を主に鍛えていて、バランス感覚を養うトレーニングメニューが中心です。このトレーニングによってコーナリング中でも余裕が生まれやすくなります。
それぞれバランス良く鍛えることを意識していますが、僕は体幹トレーニングに時間をかける割合が少し高いです。
持久力トレーニング
持久力トレーニングは、減量や体力向上のために行います。体重が変わるとレーシングカーに積むウエイトの量が変わり、車の動きに影響する可能性が出てくるので、1年を通して体重の変化が無いように調整しています。
実際に僕が行っているトレーニングは、1回1時間ほど心拍数130拍前後の有酸素運動です。
- 減量したいときは朝食前(または空腹時)
- 体力向上を目指すときはエネルギーやたんぱく質を摂取後
にトレーニングしています。
効果がすぐに実感出来るのでかなりオススメのトレーニングになります。
食事トレーニング
トレーニングの効果を生かすも殺すも食事の質が左右します。
2018年、5度目のF1ワールドチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトンはビーガン(完全菜食主義者)です。ビーガンとは、卵や乳製品などの動物性食物を一切摂らない、完全な菜食主義者のことを指します。このような食事制限は、豊富な知識がないと逆効果になってしまうので素人が真似するのは危険です。
そこで僕がやっているのは、
- 鶏肉(特にささみ肉)中心の食事
- 空腹時にプロテインを摂取
- グリコーゲンローディング
この3つを継続的に取り組んでいます。
1つ目は、鶏肉中心の食事。1日3食のうち2食をささみ肉にして、残り1食を鶏ささみ肉以外の鶏肉にします。体調によっては、豚・牛などの肉類を摂取することもあります。
ここで最も意識していることは、「体が摂取したいと思ったものを摂る」ことです。もちろんスイーツやカップ麺はダメですよ(笑)
2つ目は、空腹時にプロテインを摂取することです。僕は元々、普通に過ごしていると痩せやすい体質です。そんな人は、間食など空腹時にプロテインを1回分摂取することをオススメします。これは、普段通っているスポーツジムのトレーナーの方に教えていただきました。元々は、増量と減量を繰り返している人が増量期に行うものらしいですが、増量するという意味で痩せやすい人にも効果的であるようです。
実際にプロテインを間食として取り入れ始めてから、1㎏程度の増量であれば1週間程あれば簡単に出来るようになりました。筋肉を付けたい人、痩せやすい体質の人にはとてもオススメのメニューです。せっかくならトレーニング効果も高めたいので、僕が尊敬しているダルビッシュ有投手もオススメする最高級プロテイン、「バーサーカー ホエイクエストアルティマ」を継続的に摂取しています。
3つ目は、グリコーゲンローディングです。最近は、カーボローディングとも言われるようです。これは、持久力が必要な競技のアスリートが広く実践している食事トレーニングであり、モータースポーツにも必要なトレーニングです。
具体的には、目標(活動)とする日にちの3~4日前までは白米を減らし、3日前から白米の量を増やします。
レーシングカート時代は30周近く走行するレースに合わせてやっていましたが、4輪レースに戦いの場を移してからは、レースよりも4時間ほど走る練習日の方が疲労度が高いため、練習日に合わせています。
このトレーニングを始めてから、目標に設定した日は体が良く動くようになり、体力も長く持つようになりました。これは、競技種別にかかわらずスポーツをするアスリートにはオススメのトレーニングになります。
トレーニングはメンタルも鍛えられる
一見面白そうなシミュレータートレーニングや、体幹トレーニング・低負荷で長時間の持久力トレーニングは、コツコツと積み重ねなければ効果が出ないとても地味なトレーニングです。また、鶏ささみ肉ばかり食べていると「ずっとパサパサで全く美味しくない」とも感じます。
そんな中でも継続してトレーニングに取り組むためには、強い精神力が必要です。退屈に感じそうなトレーニングや、美味しくない食事を継続して続けると「無心になって続けよう」と考えるようになり、それは「これが続けられないくらいなら、これから悪いことが起きたら自分の努力が足りなかったからということになる」と自然に思えるようになりました。そのおかげで、レース前も「レースは練習してきたことが反映されるだけで、神頼みしたところで意味がない」と思うようになりました。
結果的には、最近の1年間のレースでは自分の実力を発揮出来なかったことがありません。全て実力通りの結果で、練習の成果と共に成績も上がりました。僕には、このトレーニング方法が合っているようです。
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